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木になるアボカド/聖なる日課/旅・本・映画

映画好きが好きな映画 雑なまとめ

趣味とかあんの?なにするのが好きなの?

ー自己紹介に続くこのての質問があまり得意じゃなかった。気の利いた返しはなんだろう、といつも変なプレッシャーを感じて顔がこわばり、たっぷり時間をかけてもったいぶったわりに見事に的の外れた返答(そもそも的ってなに)をしてしまう。質問を絶妙な角度で打ち返してしまうという臨機応変さもなかったのだ。

だからある時から自分の中で回答を決めることにした。

「スポーツ」ボツ。「旅行」とかいうには世界一周してないしなあ、ボツ。「読書」っていうには国語の偏差値低いんだよなあ、ボツ。「音楽」っていうには高いイヤホン持ってないのはなちょっとなあ、ボツ………と消去法でもって、なんとなく「映画」に白羽の矢が立った。

言葉と言うのは不思議なもので、本当にその言葉通りの「映画好き」になってからは、「新しい場所にいったらトイレをまずみる」ように私は「はじめましての人にはまず好きな映画を訊く」ようになった。スターウォーズ羊たちの沈黙、500日のサマー、どらえもん、まで様々な回答があった中でもなんとなく「映画好きが好きな映画系統」はこんなだと考察ができるドヤれるまでになった。

 

以下は科学的客観的統計的データに基づいた分析ではなく、私個人の狭い視野と短い人生で培われた独断と偏見です。なお、主要回答層は今のアラサー周辺世代です。

 

***

 

ウェス・アンダーソン

なぜポール・トーマス・アンダーソンではなく、ウェス・アンダーソンなのだろう。2010年代で大学でちょい文化系の人種っていうのに会うとこれを言う人が多かった。

あれ?「君の名は」の監督ってウェス・アンダーソンだったんだっけ、というくらい多かった。

映画は「デートぐらいでしか見ない」よりは頻繁に見るし、たまにはツタヤでDVDも借りるくらい映画を単なる娯楽以上のものとして興味ある人がなんでこぞってウェス・アンダーソンだったのか今でも謎ともいえるし、分からんこともない。作品が全体的に明るめで、おしゃれ以上わけわかんない未満。みんなで見てもいいし、一人でなにかやりながら見てもいいし、ツイッターGIFを載せるろTLがどことなく垢抜けるし。

完全に妄想だけど、1990年代だったらアキ・カウリスマキ2000年代だったらジム・ジャームッシュが占めていた位置なのではないかなと思ったりする。

 

クリント・イーストウッド

映画制作をしちゃうくらいギミックな人間でやっぱりをつけてここに戻る人がけっこういる。みんな男。やっぱりっていうのは「ゴダールも頑張って見たし、ヒッチコックも一通りみたし、ウォン・カーワイもかっこいいと思うけど」ここに戻るっていう。すっごい偉そうな形容詞で表すと、健康的。やっぱりカッコよくって泣けて笑える映画がいいよねって真剣にたどりついた結果という感じがしてこんな人が映像コンテンツをつくればまだまだ大丈夫って勝手に安心してしまう。

 

黒沢清

いわんもがな。すごいパワー。人気。カルト的かつメインストリームという日本いや世界映画界の指標ともいうべき人。

ザ・エンタメとして映画が好きという人には苦手というか「寝たわ」って人もいるけど、映画祭や文芸坐にあししげく通ういわゆる映画好きにとっては、圧倒的定番。蓮見重彦門下とお墨付きでどこにでも顔向けできる安心の"ベスト"。神秘的ながら面白い映画を今日まで不断にコツコツ作り続ける多作の制作者でもあってそこも尊敬。

 

小津安二郎

小津安二郎。実は一時期までよさが全然わからなかった。世界の有名監督もこぞって影響を受けた。すごいうがった見方かもしれないけど、小津もウェス・アンダーソンのようにいわゆる「いい位置」キャラなんだなと密かに思っている。

黒澤明溝口健二を差し置いて小津が好きっていうのは黒澤がエンタメの教科書であるのに対し、溝口はストイックな芸術家であるのに対し、小津は日常に描く職人監督。

素朴・切ない・じわっとくる・狂気的ストイック。スーパースターでもアーティストでもない市井の堅気な職人さん的あり方にたくさんの人が惹かれるんではないか。

 

濱口竜介

「○○とか、濱口竜介とか….」っていつも2番手に入ってくるといったらすごい失礼な感じになってあれだけど、いかんせん若手だし、ミニシアターでしかほぼ見ることのできない敷居の高さもあって知る人ぞ知るのくくりにまだいるシネフィルの試金石。濱口竜介がやはりすごいのは、「今現在の日本」で名作をとっている現在進行形監督ということ。

ゴダールの初期の作品とか低予算っていったって、だってパリやん、カフェでまだタバコ吸えてる時代じゃん、フィルムじゃん、かっこいいに決まってんじゃん!電柱だらけの景観最悪な東京、タバコのないクリーンな世界で、かっちょいいインディーズ映画撮れるわけないでしょ!.....いや、撮れますよっていうのを身をもって証明し続けている、それが濱口なのだ。

 

ヤン・シュヴァンクマイエル

私の世代(今のアラサー)で非大都市部に生まれ育った一定数の人間は、セカチューやら恋空が流行りに流行っていた学校で息ができなくなると、自転車をこいで隣町のマックスヴァリュに入っている、得体のしれないインスト流れるビレバン岡崎京子やらカズオ・イシグロホドロフスキーという(サブ)カルチャーの空気を吸って生命を保たものだった。そこの備え付けの液晶でずっと流れていたのが、ヤン・シュヴァンクマイエルだった。

好きな映画の中で一番…というよりも芸術家…というかもはや一つのジャンル、とにかくシュールで怪しくて、可愛くて、よくわからない狂気漂うシュヴァンクマイエルをみて「なんじゃこりゃああ」イニシエーションを経た人は一定数いる実感。私が出会ったひとはみんな女子だったな。

 

ピーター・グリーナウェイ

今まで複数の女子からこの監督の『コックと泥棒、その妻と愛人』がマイベストだと言われた。意外すぎた。

その称賛の言葉たるや、「あれほど美しいものを見たことがない。何もかもが美しい」と、とにかく美しいらしい。

確かに見てみると強烈な色彩の照明と美術の世界観が独特で物語も少し変わっている。この企画を通して最後まで制作できた事実がすごい。さらに面白いのはアマゾンのレビューだ。片や「世界で一番美しい映画」で片や「吐き気がする気持ち悪い」とに極端なのだ。人間の感性の神秘を感じる。

 

キェシロフスキ

「美しい」つながり。『ふたりのベロニカ』を世界で一番美しい映画だという人は男女問わず結構多い。見たことある人でこのことに首を傾げてしまう人はいないだろう。

 

タルコフスキー

引き続き、「美しい映画」の常連。ただしより上二つより芸術映画よりで、ある程度文脈のなさ、テンポの遅さに耐性のある人、もしくはマイペースな人だと思う。

 

青山真治

この人がどれだけ日本映画の歴史を変えたのか実際に目の当たりにしてはいない世代ではあるけれどその余震はヒシヒシと感じてきた。なんせ寡作な監督で、作品も毎年ぽんぽん出して欲しいものでもないわけだけど(すみません)直下で衝撃受けた人々にいわせると、だいぶ日本映画も「とことんどん底まで暗くなることを許された」らしい。

 

ジョン・カサヴェテス

オールタイムベスト常連の「レオン」のもとになった「グロリア」の監督。完全に私の趣味でねじ込んだだけなんですが、あの小泉今日子さんがなにかのインタビューでジョン・カサヴェテスを好きな監督だったか、尊敬する女優にジーナ(カサヴェテスの妻)を挙げていた。あと、たしか園子温ポール・バーホーベンと並んであげていた。

 

「カルロス・レイガダス」

映画好きのプロフィールでよく監督名が羅列してある中によく入ってる。「今は~」「最近だったら~」で挙がることがよくある。

ここらへんの人たちは、もはや自分が好きというよりも映画全体が好きすぎる熱量で網羅しまくってしまっているが、とくに一人をあげろと言われるとつまる場合が多々ある。私のことだ……っ…

 

「アピチャッポン」

同上

 

ヴィクトル・エリセ

ミツバチのささやき』ほとんど一本だけで殿堂入りしている監督ながら、寡作すぎて意外にベストに挙げられることがない印象。ちなみに河瀬直美さんはこの作品をベストであげてました。

 

まとめ

クリストファー・ノーランリドリー・スコットゴジラシリーズ等は私が専門とはしていない特撮系に入るかなと思い、言及していないのですが、多い。『ファイトクラブ』『メメント』『ブレードランナー』などテッパンで私ももちろん大好きなんだけども。この手の領域は専門家が大勢いるので遠慮しておいた事情がある。つまり私が呼んでいる「映画好き」というのも「ある種の」映画好きにはなる。もちろん。

 

タル・ベーラとかアンゲロプロスというアクの強い監督がベストに上がりにくいのはわかるんだけど(どこかには絶対いるんだけど数が少なくて私が出会っていないだけだと思う)

意外なのは、ゴダールフェリーニチャップリンキューブリックヒッチコックをマイベストに挙げるひとにお目にかかったことがないこと。もちろん「映画好き」だから見てはいるし話にもでるのだけど。それに対しトリュフォーブニュエルロッセリーニっていう人の方はたまにいるんだよな。ちなみにスピルバーグもいない。ベルイマンはたまにいる。この感じ

要するに映画好きというのは「公式教科書」ではなく、「自分だけの教科書」を探し求めニッチ開拓イス取りゲームをする傾向があるのかもしれない。

反対に例えば音楽ファンだと、インディーズもくまなくチェックしてるけどやっぱイチバンはビートルズだ、オアシスだ、ボブ・ディランだ、バッハだっていう「公式教科書的巨匠」に収束するきがするんだけども。

文学だったら、いろいろ読んでるけどイチバン、無人島に一作しか持っていけないなら……やっぱり聖書?源氏物語プルースト?になるんだろうか。長いしね。